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高校1年生 3学期末試験の質問 ( 生物基礎 免疫 )
2021年2月21日
高校1・2年生の期末テストの時季となりました。3年生は1月末でした。
学友舎でも、1年生の方が生物と物理の試験勉強です。昨年、緊急事態宣言で学校が休校となったため、例年とは少しばかり試験範囲が異なります。
高校生も中学生も、私は深く考えたことがないような件について、質問がときたま出ます。どんな質問でも即答できないときは調べて答えます。
今回は、人間の免疫機能について『抗原をT細胞に提示した細胞はどうなるのか、抗原提示後にT細胞やマクロファージに殺されるのか、それとも生き残るのか』でした。
教科書には次のようなイラストが載せられ、それにそって説明されています。参考書の説明も同様です。
数研出版 生物基礎
抗原を細胞表面に提示した組織細胞は殺処分されます。樹状細胞とヘルパーT細胞については明確な記述がありません。後2者は攻撃されません。質問の趣旨は『ならなぜか?』です。
細胞外に提示する時に、セットで提示するМHC抗原の種類だろうと単純に考えていました。МHCクラスTだと攻撃され、МHCクラスUは攻撃されないと。
しかしそれでは、クロスプレゼンテーション、その両方を提示する樹状細胞が攻撃されない説明がつきません。
ヤフー知恵袋でも同じ疑問が出されていました。
結局よくわからないということで、ネットで検索してみました。
まず製薬会社にお勤めの方にはおなじみの、大手 ThermoFischer のサイトに次の図がありました。
ThermoFischer SCIENTIFIC
うわーこんなに抗原と受容体があるのかと圧倒されました。某メーカーの解説図とはパラレルワールドです。
ファイザー説明資料
今時、高校1年生の生物定期試験や大学入試で、上の説明を書いたらばってんを食らいます。(教科書的説明からは)
さて、ずいぶんくわしい話になっているのだなと、素直に日本語で検索しました。すると、どうも最先端の研究課題で、まだよくわからないことが多いようです。
大阪大学ウエブサイト
とにかく最先端分野!!
●セキュリティソフトがブロックするかもしれません。
Office Oho!NO
なんと国の『戦略的創造研究推進事業』で、胸腺でのT細胞の分化に関連して研究されていました。
独立行政法人 科学技術振興機構
そこには自己免疫疾患の発症機序についての研究もありました。それによると、細胞内の変性たんぱく質が抗原提示されてしまうことがあり、すると自己細胞が攻撃されるとの記述が。
独立行政法人 科学技術振興機構
これはつまり、自分の細胞の中でT細胞が胸腺で教育されていないタンパク質が出現すると、自分が自分を殺処分、ということですかね。
高校生の質問に答えるためにとさらに調べると、3時間ほど後にこんな研究に行き当たりました。
糖代謝とT細胞制御の関連についての研究です。細かな点はわかりませんが、こんなことまで調べているのかと。
PMC
さらには、専門ではありませんので、研究の妥当性はよくわかりませんが、これはどこかで聞いたような話だ、という研究が・・・
素人にわかることは、要は全体は把握されていないということですか。
PMC
とうとうビタミンDと樹状細胞に言及する研究までありました。
京都大学大学院医学研究科 血液・腫瘍内科学
調べてみて、高校の教科書は触れていないことがたくさん検討されていました。
なおさら、樹状細胞と組織細胞を混同して描いたような説明が奇妙にうつります。
( 後で調べたところ、混同ではないようです。事実を描いています。)
高校生にはものすごく簡潔に、塾ですからテストに合わせて、お話しました。
それにしても、世の中、いろいろご専門の方々は、ずいぶんくわしくご存じですね。
ちょうど、自己免疫疾患に、新しい世代の医薬品がたくさん現れるころ合いでした。頼もしい限りです。
利根川進博士の抗体についての研究が、高校教科書に反映されたのはいつごろでし
ょうか。それ以前に高校を卒業された方は、最近の高校生が習うことはご存じないかとも思います。
2002年から2010年までのゆとり教育期間は、生物Tの教科書に免疫の単元はありませんでした。40年前の教科書とほぼ同じ内容でした。
私も、塾をしていなかったら、出だしに載せた高校教科書に書かれたことは、知らぬ存ぜぬの世界でした。
最後に、教科書的な説明を補足するため、最近の定説に目を通しました。
サイト 薬に役立つ薬の情報~専門薬学 『自己と非自己の認識』より引用