--  お知らせ2015 --
 


最近の授業から (中学生 英語が特に苦手な時の対策)  (2015年10月25日)

英語が特に苦手ではない場合( 平均点から上で成績向上をめざす時 )は、フォニクススラッシュリーディングを応用した学習で、たいていうまくいきます。


なかなか平均点をとる事が難しいような時は、その原因に合わせた対策を工夫しています。
個々の単語の読み書きが成績低迷の原因ではない時は、次のような練習をしています。 (単語の読み書きが特に苦手な時は、これとはまた別の練習です)

他の学習方法で1年から2年勉強しても、理解できず応用できなかったことが、この方法で、1回から4回ほど集中的に練習しすると、応用が利く形でできるようになり始めます。

   経験的にこうしたらできたというのが正直なところですが、学生レポ
   ート風の解説と関連文献へのリンクをつけてみました。

   練習に際して、中学生には細かな背景的知識は特に話しません。
   まれにかたくなにこの練習方法を拒絶することがあります。そのよう
   なケースでは「インフォームド・コンセント」を得るために、かみく
   だいて説明しています。

英語が極端に苦手な場合、英文を文法的に分析せずに、丸暗記して思い出してすませていることがほとんどですので、簡単な肯定文を否定文と疑問文へ言いかえる練習から復習します。

   言語学者チョムスキーが言うような、変形生成文法を獲得するための
   生得的言語習得機能のスイッチを入れます。

その際に、否定文と疑問文への言いかえのルールを、日本語で定式化して思い浮かべる練習を、英文の言いかえ練習に先がけて行います。
それに使う例文は極限まで簡単にします。

   例文の長さをできるだけ短くして、主語と動詞を文中から見つけ出す
   作業を省きます。
   ワーキングメモリーへの負担を軽減し、文法規則のルールへと思考力
   が集中するように、援助します。

   簡単な単語を使用することで、単語の意味についてのプライミング効
   を抑え、英語の意味ではなく、文法規則の分析に集中しやすくしま
   す。
   語の統語論的規則意味と音韻から区別する心理的操作を援助します。

   外国語学習が不得手な場合、ワーキングメモリーの連続的な系列記憶
   容量が少ないことに配慮します。


否定文へ言いかえる練習では、例えば、
You are・・・・・. と You play・・・・・. という主語と動詞以外を無視した文を見くらべながら、「be動詞の時は、be動詞の後にnotをつける」、「普通の動詞の時は、動詞の前にdon'tをつける」というルールを日本語で言う練習をします。
三単現のdoesn'tは最初は除きます。

   外国語教授法の研究分野で言われている中間言語を利用します。
   中学生がすでに身につけて活用している日本語の生成文法を利用して、
   語の生成文法に気づく練習をします。(学校国文法は関係ありません)


これにはコツがあります。両手を目の前に差し出して、その位置にその英文を思い浮かべ、be動詞と一般動詞の位置を両手でさし示しながら、ルールを言います。
そのようにして、ルールを言う練習を15分から20分続けた後に、次のステップへ移ります。

   両手を目の前にさし示すことで、手と体全体の定位活動を活性化して、
   文の線形図式のイメージを形成する助けとします。

   また、新しいことを身につけるには、理解したり操作ができるように
   なってからさらに、過剰学習が必要です。
   中学生にはこのメタ認知がないことが普通ですので、なかば強制的に、
   できた後も練習を続けます。
   「インフォームド・コンセント」はとります。


次の練習ステップでは、You are,  You play, We are, We study, They are,They drink など、三単現ではない文に限って、ランダムに書きならべた問題を見ながら、その一つ一つについて、あてはめるルールを、前もって必ず思い出して言ってから、否定文と疑問文へ言いかえます。

   問題に答える際の心理的操作をスモールステップに分解して、継時的
   順序を守って練習することで、答えの英文を視覚的あるいは聴覚的に
   記憶して再生する方法では対処できないようにします。

   文法ルールについての生成文法を学習するための、生得的機能が働か
   ざるを得ないような状況にします。
   英文の知覚的あるいは意味的な表象を記憶する練習ではなく、英文を
   生成する際のコントロール機能の練習がなされるようにします。

   コントロール機能のスイッチが入る事をおさえてきた、英語学習への
   構えをくずします。


英文の生成規則をあてはめる心理的操作を省略して、答えを丸暗記して乗り切る方略が役立たないように、問題としてならべる英文の数は、短期記憶のスパンを超えた数にします。

   短期記憶スパンは、その場で判断します。関連情報につきましては、
   この方の博士論文をご覧ください。

   英文の変形生成規則をう回して、その場の正解を覚えて切り抜けよう
   とする方略は、英語が苦手な場合強烈です。
   初めの数か月から困難なケースでは数年間、次から次へと手を変え品
   を変え現れるその学習習慣との「戦い」になることは、まれではあり
   ません。

   その場しのぎですまそうとする学習方略は、ほとんど例外なく他教科
   にも汎化しています。
   英語を通してそれを変えると、他教科でも、その場しのぎの学習スト
   ラテジーを変えるきっかけとなります。
   (要因はg因子だけではないようです)


ここで大切な点は、発声障害がある人の書き言葉の練習や、まして類人猿に、視覚的なシンボルを使用した疑似言語を教え込む訓練、ではありませんから、口頭で文法規則に従って文を変形する練習を徹底します。

答えを(解答欄に)書きこみながら考えおぼえる習慣を、一度排除します。

書きながら考え、おぼえようとすることから生じる悪循環から抜け出し、言語習得の出発点である音声言語として、英文の変形生成規則を応用できるようにします。

利き手で書記動作をしながら、それを手がかりにして、視覚的なイメージ ( 文字言語 )として英文を覚えようとする習慣を制止します。

そのために、練習の初めに行う変形ルール学習では、You are などの問題文中の、主語と動詞の相対的位置を、生徒さんの目の前の空間に、両手でさし示して思い浮かべさせながら進めます。

   経験的に効果的なのでそうしていますが、人間が言語を含めた高次な
   心理的機能を働かせる際に、それらが機能する基になる図式(スキーマ)
   を最初に起動するのは感覚運動的な機能だ、という心理学説もありま
   す(リンク先75ページ)。


中学校で本格的に英語学習を始めた初期のつまづきの一番の原因は、書いて手の運動感覚を利用し、さらに書かれたものを視覚的に見ることで、文字言語として英語を学習する習慣です。

   外国語学習が極端に苦手な場合、初めに学習する簡単な文の理解には、
   列記憶力の個人差が影響します。

   苦手な場合、音声の系列を一時的におぼえる短期記憶スパンが短く
   ります。そのために文の変形規則を考えられないことが起きます。
   すると、それを補償するために、文字言語として学習する習慣がつき
   ます。

このことが、音声言語の利用が不可欠な、文を変形する際の規則の発見と応用のための練習を妨げます。

   それを避けるために、変形規則練習用の問題文は、簡単な意味の単語
   を使った、できる限り短い文を使用します。

英単語の読みと書きには特に問題がなくて、英語が苦手な生徒さんは、音声言語としての英語の練習を省いて、文字言語としての英語に進んでいることがほとんどです。

   人間の言語機能の基本である音声認識と、文を変形する際の規則を口
   頭発話の中で応用する力を、できる限り活性化します。
   (発音の上手下手にはこだわりません)
   文字言語としての練習は、音声言語として英文変形の基礎ができてか
   ら行います

これを数回(数日)くりかえして、言いかえがスムーズにできるようになりましたら、三単現動詞を含んだ英文を混ぜた練習に進みます。

文の変形規則に習熟したところで、普通の長さのいろいろな意味の問題文を使用した練習へ進みます。


英語が得意な場合は特に指導しなくても自発的に進む学習のプロセスを、細かなステップに分解して、つまづく原因となってきた学習方法から離れて練習できるように援助します。

体験的には、このような方法が有効な生徒さんは、半数近くいらっしゃるのではないでしょうか。
「特に苦手な…」と書きましたが、さかのぼり復習の際は必ずチェックしています。


ゆとり教育期間とそれ以前は、教科書に出てきた文を丸暗記すれば得点できました。
現在は、1年生で学習する変形文法を正しくあてはめられないと、テスト範囲の教科書と学校ワークを丸暗記しても、減点され誤答してしまいます。

平均点を60点前後にするために、解答するためには文を変形することが必要なように、設問が工夫されています。
どんな出発点からであれ、テスト得点を上げようとすると、丸暗記ではなく、本当に理解するための練習が必要です。

   「英語で発想する」とか「ネイティブの子供のように」とかいう練習
   方法とは全く異なります。
   日本語で思考する日本人の中学生としての認識能力を、フルに生かす
   ための手続きを踏みます。

   科学技術振興機構に助成された研究や日本英語検定協会がバックアッ
   プしている研究では、聞き取り能力がすべての基本だという主張が主
   流です。

   それらの主張の妥当性はともかくとして、音声言語としての練習を省
   いて文字言語として学習すると英語が苦手になることは、経験的に確
   かです。

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よく出る解答パターンを暗記練習して、苦手な場合はそれで良しとする現実的な選択肢もあるとは思います。
高校入試と中学校卒業が近づき、生徒さんと保護者の方が、それを選択された時は、学友舎としましては、その選択肢の中で工夫いたします。


学友舎は、職業倫理として、少なくとも一度は、上に書きましたような徹底的なさかのぼり学習をご提案します。
通年テキストに加えて購入していただきます復習用問題集は、上に書きました練習方法の発展形です。

ただし時間とご本人の努力は必要です。
これにつきましては、ご理解のほどよろしくお願いいたします。


他教科の学習はいつも通り進めながら、いつもの学習に加えて追加出席して集中的に学習すると効果的です。

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限られた授業時間の中で、高校受験をめどに、学友舎は工夫します。
お急ぎの際は、追加出席をお願いいたします。
                           (2015年10月25日)