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【 最近の授業から( 数学で比較的やさしい問題を練習する理由と練習方法 )】
                          2018年11月5日
数学の学習では、基礎的なやさしい問題から難しい発展問題へと、順に練習していきます。
この時とても大切なのですが、見のがされがちなことの一つに、『やさしい問題を解く中で、難しい問題を解く際の手順と思考方法を練習する』ということがあります。

例えば、この時期、中学1年生は『一次方程式の利用』を勉強します。方程式の文章題は、そこに書かれていることを、文の流れにそって式で表していけば解ける問題がほとんどです。
そのためには、問題文を読みながら、そこに書かれた数量関係を、文の該当する部分の上か下に、そえ書きしながら考えることが役立ちます。

その際に大切なことは、まずは、『基礎的な問題で書き込みながら考える練習をすること』です。そうすることで、難しい問題を解く際にもそえ書きしながら考えられるようになります。

しかしその際に一つ問題があります。それは、基礎的な問題はそえ書きしなくてもできてしまうことが多いことです。
生徒さんにしてみれば、『書かなくてもできるのに、なぜ添え書きする必要があるのか、煩わしい』となります。

『そえ書きしなくてもできるけれど、あとで応用問題を解くときのために、そえ書きを練習する』と説明しますが、なかなか納得しないことも珍しくありません。
基礎的な問題でそえがきを練習した人は、発展問題へと特につまづかずに進みますが、『つまづいてどうしようもなくなってから練習』というのがよくあるパターンです。


式の計算でも同じことが言えます。簡単だからと途中を飛ばして暗算しているとどうなるでしょうか? 

学習が進んでより難しい問題を解く時は、途中の計算式を書きながら考える必要が出てきます。
その時、簡単な問題を解く中で途中を書き表す練習をしてきた人は、むずかしい計算の途中を書くことが苦ではありません。

しかし、簡単な問題を暗算でこなして、難しい問題に出くわすとどうなるでしょうか?
式の途中を書く中で獲得される心理学的メカニズムは、思考・視覚的な分析と総合・手指の運動プログラムとフィードバック・それらの協応・・・・と複雑です。
基礎的な問題を計算する中で、途中を書く練習をした人は、そこで獲得した心理的な機能を、複雑な計算を解く中で機能単位として組み込むことができます。
一方、練習しなかった人は、途中を書くための心的操作機能が獲得されていませんから、それを形成しながら、なおかつ難しい計算を考えることになります。
人間の脳の情報処理量は年齢的な限界があります(最近はやりのワーキングメモリー)。そのために、途中もかけないし考えることもできない、ということになります。


基礎的な問題の練習を、それ自体に速く答えることを自己目的とするのか、次のレベルの問題 (より進んだ心理的操作) を獲得するための準備ととらえるのか、運命の分かれ道です。


このことを納得していただくには時間と手間がかかります。個人差が開きます。
その単元の応用問題を例にあげて説明することで納得する人もいます。
後の学年や高校の学習内容を具体的に見ることで納得する人もいます。
まれではないのですが、大学初年度程度の微積分やそれを使ったベクトル解析を例に挙げて説明する必要があることもあります。

よろしくお願いいたします。