--雑談・塾長のつぶやき-- 学友舎高崎(学友舎 lab)
英検受験の語られない一面 2010年 晩夏
【他教科から逃げる言い訳と、悪い冗談のような結末】
少なからず、英検対策の勉強を理由にして、他教科の勉強から逃避する中学生がいます。小学生が、塾で算数や国語を勉強するのが嫌で、楽しい英会話教室へ通う、その心理と同じです。
中学生は、学校の試験と英検試験の日程が重なる時、英検を優先させるのが普通です。その結果次のようなことが、かなりしばしば、起きます。
『英検受験を優先させたために、学校のテスト前に他教科の学習時間が減り、その結果、成績が全般的に低下した。
学校の英語テスト成績も、3年生の秋には優位性がなくなった。
英検3級に中1までに合格していたり、中2までに準2級の一次試験に合格していたのにもかかわらず、高校受験模擬テストの英語偏差値は40以下になってしまった・・・』
これは、小学校の低学年から英語教室に通われた生徒さんに、やたらと起きます。低学年から英語を学習して、英語が得意になる方は確かにいます。それと同時に、上記のことはただの偶然ではなく、必然的に起きるようです。
小学生英語教室に通っても、その効果で通わなかった生徒より英語ができるのは、中学1年の1学期まで、というのが塾業界の内向けの経験知です。
《2014年追記》
高崎市は3学期制に戻り、英検の日程と学校の定期試験がまったく重なるこ
とはなくなりました。
しかし、英検受験に夢中になりすぎると、テスト前に他教科の学習が極端に
減ることに変わりありません。
【英検対策とは別に学校授業の予復習は必要】
英検用の教材は、中学校の教科書には準拠していません。学校教科書の新出単語や慣用句や文法事項は、授業に合わせて、それとしてしっかりと学習する必要があります。
あまりにも英検に注意を奪われると、このことが見逃されて、学校の英語科成績が下がることがあります。
学友舎では、英語について特別な思い入れをいだいていたり、特殊な必要がある方以外は、3年生で3級を取得するペースで、5教科全体の学力を高めることをお薦めしています。
【「ゆとり教育」期間に下がった、英検合格基準と社会的評価】
英検は「ゆとり教育」が本格的に実施されると、まるでそれに合わせたかのように、各級の合格基準が下げられました。少なくとも3級までに限れば、20年前から30年前の資格とは、取得してもその実力はまったく異なります。
また、ほとんどの高校で、3級を持っているかどうかは入試判定に実質関係ありません。3級については、同年齢の他者よりも1年か2年早く取得しても、残念ながらそのことは何も評価されません。
これは多分、3級までは、英会話教室を準会場として、2次試験まで受験できるからです。
また、3級の2次試験は定期テストごとにリスニング問題に接している中学生には「意外と」簡単です。
今まで、試験前に「主語+動詞+目的語」の構文を守って、欲張らずに3単語文で答えるように助言しましたが、市販の2次試験用問題集に家庭で目を通すだけで全員合格しました。
英語学習は、高校・大学・社会人へと続きます。他教科の学力を含めて、全般的に成績を高める中で、英検にも挑戦されることをお薦めします。
【バイリン神話にご注意を】
くれぐれも、バイリン帰国子女神話を振り回す方々にご用心ください。20年以上前からある、海外赴任子女向けの日本語補習学校や、帰国子女向けの英語力維持教室について触れない方々は、ある種の「詐欺師」です。
semi-lingual や double-limited でご検索なされば、バイリンガル神話の陰に隠れた現実を垣間見られます。日本では、例外的にまれな方を除いて、英語教育関係者は表立っては一切語らない、海外の常識と帰国子女の現実を垣間見られます。
ただし、あまり聞き心地はよくありません。実は私も、5年ほど前までその現実を知りませんでした。
高崎市立図書館でたまたま手にしたブルーバックスの一冊で知りました。なぜかあっという間に絶版になりました。
「バイリンガルの科学」小野博 ISBN-06-257011-4
次の方のブログに簡単な紹介があります。「海外での子供の教育」
【以下2016年追記ご参考】
英語教育については、「触らぬ神に祟りなし」、「物言えば唇寒し秋の風」という心境です。
英語教育業界の営業トークでなく、英語を使って仕事をされている方々の率直な言葉をお伝えすると、反感を買って塾生が減ってしまう、と言うのが現実です。
少なくとも一度は、英語に夢中になり他教科より優先させることのリスクを、遠回りにオブラートにくるんでお話ししますが、真意をお伝えすることができない事がしばしばです。
最近は、英語を他教科より優先することについては、聞かれなければ話さない、方針です。意図的な嘘は言わないという、最低限の個人的な良心を守るための、世間にありふれた保身術です。
【バイリンンガルの現実】
いとこの一人は英語ネイティブの白人と結婚しました。混血の子供たちがいます。別のいとこは上智大の外国語学部を出て、英語とスペイン語で外資系企業で働いています。
その他同様な境遇の方々の実話をいくつも見聞きしてきました。海外に移住して、日本語を忘れてその国の言語を話すようになることは簡単ですが、バイリンガルになるには、ものすごい努力と素質も必要だと思わされるケースばかりです。
中には、語学学校の宣伝に載っているように、週数回の教室通いで「バイリンガル」になった方々もいらっしろゃるかもしれません。個人的には知りませんし、公式に認められた文献で読んだこともありません。
【個人的な英語経歴】
個人的には学生の頃英語は好きでした。すでに30年前のことですが、大学院生の時、専門のテキストと文献はすべて英語でした。毎週30ページから200ページほど実験論文と単行本をもとに論議するため、最初の3か月はきつかったです。
授業自体は日本語でしたが、中国からの留学生とは、日本語が通じないと、こちらは中国語がわかりませんので、英語とチャンポンでした。
最先端の知見に触れようとすると、英語・ドイツ語・ロシア語・フランス語の文献を読むしかありませんでした。英語とドイツ語しかわかりませんでしたので、それらに訳されたロシア語やフランス語の論文に四苦八苦しました。
社会人になってからも、英語の便利さは実感してきました。1995年にウインドウズ95が発売され、国境を越えたインターネットが加速度的に身近なものになってからは、なおさらです。
塾で高校生にも英語を教えますので、今でも毎日少しずつ、ネットのニュースやYouTube を利用したり、TSUTAYAでアメリカのTV番組DVDを借りてきて、研修しています。
しかし、日本に住む日本人が、日本語を使って自然と社会と人間について知識と思索を深めることより優先して、ネイティブの小学生から中学1年生程度の内容の英語を習得することに時間とお金をかける事については、それは誰の得になることなのか、と思い続けました。
【サピア・ウォーフ仮説とEU(欧州連合)の言語政策】
心理学ではサピア・ウォーフ仮説以来、個人が習得する言語レベルと認識能力を含めた心理的発達レベルとの関連が論議されてきました。
個人的には、個々の言語表象を超えたより抽象的な意味表象が心理的発達レベルと相関している、という論議の方が好きです。しかし、「ある物事を指し示す言葉を知らないという事は、その物事を自覚できないという事だ」という論理が、全く誤りだとは思えません。
カッコ内の考え方は中学1年生の国語教科書に載っていましたが、2016年版教科書からその文章は削除されました。
心理学の歴史を顧みると、2010年頃までは常識の一つとして語られていた、ある心理学理論の系統に影響された考え方が、意図的か偶然か、教科書から削除され始めたようです。
ヨーロッパ大陸系の科学的思索の排除の観があります。
日本では英語公用語化論が政策的に推し進められていますが、EU(欧州連合)では加盟国の言語すべてが公用語と見なされ、公文書はそれらすべての言語で作成されます。公文書提出者は、言語を選ぶ権利があります。
EUには共通言語政策がありません。「言語は貴重な財産である」とみなされ、欧州委員会には、多言語主義を担当する委員がいます。
単一言語(英語)を公用語にしようとするのは、アメリカとイギリスです。母国語を捨てて英語を公用語(第一言語)にしようとしているのは、先進資本主義国では日本だけです。
実際、中学校から高校にかけて、興味関心と思考力のレベルに比べて、英語学習で学ぶ話題内容のレベルが年齢的に低いものになってしまい、それが原因で英語嫌いになる人たちを見てきました。
小学校の高学年から中学校にかけて、大人が読むような小説や科学入門書等を読めるようになります。その時、英語を優先させるという事は、ネイティブであれば、幼稚園から小学校の低学年に学習するであろう内容について、その英文を暗記することになります。
小学校から中学校にかけて、日本人の子供たちが英語を使って考える知識と思考のレベルは、日本語で考えをめぐらす場合の、幼稚園から小学校低学年程度になります。9歳の壁を超えることはありません。
英語が他教科より優先されると、それがほめられることになります。
日本の標準的な大学入試英語問題は、アメリカの中学校教科書レベルの語彙と同じかそれ以下です。
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また、小学校から中学校にかけて、英語学習に時間をかけ、他教科の学力が遅滞し、それが足を引っ張って、中学校に入ってから英語力も停滞してしまった例も何人も見てきました。
それらの方々は、「大学生になった頃の英語力は、小学校から学習してきたたまものだ」、「小学校から習っていなかったら、もっとできなかったろう」とふりかえっていらっしゃいました。
それが本当かどうかについては、仮定の話しかできません。
【次のサイトと文献をご参照ください】
まずは、英語を優先することに反対なサイト
文部科学省の英語教育推進政策もあり、英語早期教育と優先化に肯定的
なサイトは、検索すれば無数にありますので、リンクは載せません。
文部科学省の方針を実施すると、中学生、高校生がカタカナ発音で話し始め
ます (『川合典子ブログ』)
英語の早期教育が有効だと錯覚させる2つの誤解 (『川合典子ブログ』)
帰国子女の英語-帰国後の英語維持について (『川合典子ブログ』)
「授業は英語で」は時代遅れ(『希望の英語教育へ(江利川研究室ブログ)』)
バイリンガルとダブルリミテッド (『言葉と翻訳ブログ』)
次は英語教育関係の学者先生のご意見(pdf)
問題提起「ダブルリミテット/一時的セミリンガル現象を考える」
中島和子 元名古屋外国語大学教授
現在、この方は、大手教育産業と語学教育出版社と組んで、カナダ
の例を出して、バイリンガル教育をバラ色に語っていらっしゃいま
す。
【いとこの混血児は日本語とバイリンになることを拒否】
私のいとこはカナダ人と混血児をもうけ、カナダに住んでいます。日本語とのバイリンガル化は、子供が拒否したためやめました。
また、旦那さんの家族は、英語を第一言語として選択した人とフランス語を第一言語として選択した人に分かれたそうです。家族間で、日常会話はバイリンガルにできますが、込み入った話や専門の話は英語とフランス語の壁に阻まれてしずらいそうです。
いとこの旦那さんを含めて、普通はつけないような社会的ポジションについて来た方々です(以前、日本のカナダ大使館勤務)。知的に低いわけではありません。
【立場をわきまえずに事実を語った人の運命】
次の方は現在何をされているのかわかりません。時流に乗れずに、干されてしまったのでしょうか。英語教育の問題を、民族の独立と植民地化政策とからめて考察されています。
日本における英語教育と英語公用化問題
世界における英語の位置 八田洋子 元文教大学講師
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何はともあれ、学友舎は、塾生のみなさんへの英語指導に、自信を持って工夫して取り組んでいます。英会話教室にない利点は、5教科の学習を全体的に考慮して、限られた学習時間を大切に活用することです。
英語は便利ですが、人間の価値は英語だけでは決まりません。
あと30年後、科学技術の最先端と国際商取引で使用される国際語が英語であり続けるか?経済関係のニュースを見るにつけ、個人的には、ユーラシア大陸のある多民族国家の言語にとってかわられているのかなと思います。
奈良時代の中国語が江戸時代にオランダ語に代わり、明治維新で英語・仏語・独語になり、第二次世界大戦後英語になったように。
その時、私はすでに生きてはいません。