--雑談・塾長のつぶやき--                                                                                                                                            学友舎高崎(学友舎 lab)
頭の中だけで考えるという事(成績不振の主因)                  2010年12月26日

  このページは、ホームページを作り始めた最初の頃に書いたため、だらだらと長いです。



《2014年追記》

2011年に小学校教科書が改訂され、中学・高校の教科書も順次改訂されて、ゆとり教育」は終わりました。それにともない、このページに2010年に書きました子供たちの問題は、少なくなりつつあります。

しかし、9歳の発達の節前後に「ゆとり教育」を受けた、2014年現在小学校5年生から上の世代は、「ゆとり教育」の影響を残すのではないでしょうか。
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【勉強が得意になる極意?】

心配事で頭がいっぱいになると判断力が落ちます。この『頭がいっぱいになること』をうまく避けることが、勉強が得意になるコツです。少なくとも、算数・数学と理科には当てはまります。

ノートや計算用紙に、問題の条件を書き並べたり図式化せずに、すべてを頭の中に思い描いて解こうとしたら、行き詰ったり勘ちがいします。解けたとしても、とても時間がかかり非常につかれます。


【「ゆとり教育」が蔓延(まんえん)させた勘ちがい】

「ゆとり教育」は、学年ごとの学習内容の一部を、1学年次の学年に移しました。あつかう問題も、その学年の理解力からすると、条件と変数が少なく、頭の中だけで考えても解けるものがほとんどでした。
「ゆとり教育」を受けた生徒さんたちは、この点で勘ちがいしている事が良くあります。

   ご参考 ゆとり教育とは何だったのか?(日本女子大学 岩木秀夫教授)

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【小学校テスト90点と100点の差】

現在小学校では、図や計算の途中を書かないと解けない問題をあつかいます。そのような問題でまちがえても、学校のテストでは80点から90点は取れます。
しかし、さすがに100点となると難しいようです。

【中学へ進学してから大コケ】

そして中学に進学すると、教科書の新出内容は、ふつうはどれも頭の中だけでは解けない問題になります。「新たに学ぶ式や図表を書く練習の中で」習得できる内容を、学ぶことになります。学校のカリキュラムとはそのように構成されています。

【入試問題の作り方】

入試問題は言うまでもなく、学期ごとの定期テストでも、頭の中だけで考えていたら解けない問題が、出題されます。平均点から上で成績を上げようとすると、そのような問題に正答することが必要です。

【現在のカリキュラム・・・50年前の「天才」少年少女用】

現在の学校カリキュラムは、50年ほど前に、旧ソビエトのモスクワ大学付属小学校で、実験的に始められたカリキュラムを参考にしています。心理学の実験として、いわゆる知能指数が130を超えるような、特殊な生徒を集めて実施されたものですから、簡単ではありません。

知能指数130とは、大雑把に言って偏差値で70以上、出現率は100分の1以下です。市立中学校で考えると、1番から3番くらいの常連で、定期テストは全教科100点マイナス0から3点、というような人です。その分野の心理学では、「天才」の下限は知能指数130です。

【性格に影響される、新しい事態への適応差】

性格的に、今までの自分を乗り越えることが好きな人は、カリキュラムに沿って教えられる新しい内容に、こだわりなく適応します。

しかし、『今までの自分の知識とやり方』にこだわり、それで新しく示された内容に対処しようとする人もいます。すると、中学校へ進学してから、突然、信じられないように成績が下がり始めます。それは、1年生1学期、2回目の定期テストから始まります。

【その実態は、小学校4年生までの思考方法へのこだわり】
  (「ゆとり教育」以後のカリキュラムでは、2年から3年の思考方法
   対応します。)

この『頭の中だけで考える』という事は、次のように言い換えられます。

 『新しく学ぶ、今までより複雑な問題に、小学校4年生までの思考
  方法で対処する』という事です。

中学校の定期テストは、練習さえすれば、小学校4年生の思考方法で、平均点くらいまでは取れます。(注1・2)

25年ほど前、心理学的な興味から(注1)、小学校3年生に、中学校1年で学習する計算をまねさせました。その小学校3年生は、見かけは立派に計算しました。「ゆとり教育」の中学定期テストで平均点を取れたでしょう。

これは、学習指導として先取りしたのではありません。そのような猿まねは、個人的には嫌いです。

【学習指導を人格否定と勘違いする位の「自信」】

小学校4年生までの思考方法で過ごしてうまくいったことがある、という記憶と「自信」があると、その幼い天動説のようなやり方を乗り越えさせようとすると、しばしば生徒さんとのたたかいになります。 (注3)

私は、学習方法の勘ちがいを指摘しているだけですが、生徒さんにとっては、人生の対処方法と人格の尊厳をかけた脅威となることがあります。(注4)

生徒さんの顔は引きつり、泣くこともあります。『塾先が馬鹿にした』、『お父さんにもほめられてきたのに』とか、『できない事ばかりさせて、意地の悪い塾先だ』と、保護者の方に言いつけられたこともあります。

【しかし逃げられない課題】

生徒さんがやめてしまっては、教育的働きかけができませんから、声かけと学習内容の、ころあいや程度は工夫します。残念ながら、あせって失敗することもあります。

しかし、職業倫理として、働きかけを放棄することはできません。また、働きかけなければ、成績は下がる一方です。中学へ進学してから、結局、この塾にいても成績が上がらない、と言ってやめていきます。

【大手塾勤務時代に受けた業務命令】

大手に勤めていた時は、「放っておいて、やめるまで月謝をもらっておけ」と指示されたこともあります。まあ確かに、1教室に50から100名も生徒がいれば、それが一番無難です。

ある意味、学校カウンセラーがうらやましい限りです。課題の先送りとうやむや化は、数カ月おきに定期テストがやってきますから、成績を上げようとすると、選択肢に入りません。

学友舎は、小学生コースだけでなく、中学生と高校生のコースもありますから、課題を先送りして逃げていますと、矛盾が雪だるまのようにふくれあがります。いずせれにせよ、この課題から逃げられません。

【「ゆとり教育」以前は、想像しなかったこと】

まさか教科学習の指導をしている中で、『今までの自分を乗り越えよう』とか、『今までの自分になかったことを身につけよう』と声かけするとは。「ゆとり教育」以前には想像もしませんでした。それは、生徒さんにとっても当然のこと、あたり前のことでした。

【「ゆとり教育」以前の子供たちの感覚】

頭の固くなった老人と、定説からしか考えられない、最近はやりの科学者はともかくとして、以前ならば、

  『 今までの自分が知っている知識と思考方法だけを使って、
    世界の物事すべてを解釈し、閉じた知識で閉じた世界を
    説明する方便。もっぱらそれを工夫して磨くための練習 』

は、子供たちの間では笑い飛ばされたでしょう。

今までの自分が身につけていない有意義なことを、学習し練習して、身につけていくことは、楽しくて格好いいことでした。大人に近づき、追い越すことでした。
世界は、良しも悪しも、まだ知らないことに満ちあふれ、未来は、過去に縛られた過去のコピー(フラクタル)ではありませんでした。おとなは、批判し追い越す対象でした。大方の子供たちにとって。


     ご参考 ゲーデル不完全性定理と無限の研究としての集合論
                    (神戸大学 渕野昌教授)

【教育委員会もうんざりか?】

この点に関しては、群馬県教育委員会も、うんざりしているかもしれません。
平成20年度、群馬県県立高校、国語入試問題に、次の文章が載せられていました。

 『 新しいものを作る、新しい形になる、そしてそのたびに新しい
   機能を獲得していく。
   まさに生命そのものが創造性と切り離すことができないものな
   のである。
   ・・・・要するに私たちが「いきている」ということは、すな
   わち何かを創造し続けている事なのである。・・・・
   日々の暮らしの中で私たちは何かを生み出し、そして変化し続
   けている。
   だからこそ、人生は刺激に満ち満ちている。』
                  (茂木健一郎氏からの抜粋)

(注1)

【25年前に読んだ心理学論文】

25年前、この話を心理学のテキストで読んだ時は、まさかと思いました。それから四半世紀たち、様々なケースに直面して、対処方法を工夫してきました。

心理学に関心がおありの方は次の抜粋をどうぞ。邦訳版は出版されていません。学友舎では、教育相談(面談)の際に、教室での指導からのご報告とともに、このような内容にも触れています。

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Levels of Abstraction in Spontaneous Behavior
 自発的行為における抽象能力の諸水準

Fischer K.W. et al. THE DEVELOPMENT OF ABSTRACTIONS IN
ADOLESCENT AND ADULTHOOD.
 フィッシャーその他 青年期と成人期における抽象能力の発達

Commons M.L.et al. ed., BEYOND FORMAL OPERATIONS. Praeger,1984. より
 コモンズその他編著  形式操作を超えて プレイガー出版 1984より


・・Adults are not likely to do their best in most situations.To the
contrary, they seem to commonly function below their optimal level.・・
  大人はたいがいの場面で最善をつくすとは思われない。反対に、ふつうは
  最も高い水準よりも低い機能を示すようだ。

One of the reasons for this poor performence may be the adult
tendency to rely on fallback strategies when there is no strong incentive
to do the hard work necessary for a high level of abstraction. (Siegel,
1975)
  この低い遂行力の原因の一つは、高水準の抽象力を必要とする、困難な作
  業を行おうという強い動機に欠けたと時、大人は退行方略に頼りがちだか
  らであろう。

There may be a system in this apparent laziness.・・・
  この明らかな怠慢には、体系的な規則性がある。・・・

That is, as their optimal level moves up, they may become less and less
likely to demonstrate that optimal level in their spontaneous behavior
(Hand,1981b).
  つまり、可能な最高水準が高まるにつれて、自発的行為の中では、ますま
  す、その最高水準を示さなくなるのであろう。

They will still function at their optimal level in settings that are
structured to support such performence and in domains in which they
are highly motivated (see for example, Rest, note 8 ), but otherwise
they will tend to fall back onto lower-level skills.・・・・
  とはいえ、最高水準の抽象作用を支援するように組まれた環境や、強く動
  機づけされた分野においては、もっとも高い機能を示す。しかし、それ以
  外では、より低い水準の知的技術に頼りがちだ。

Perhaps optimal level and spontaneous level routinely match at only one
point,when the person's optimal level is at the beginning of the abstract
tier, Level 7 single abstractions・・・・
  多分、可能な最高水準と自発的に示す水準は、常に発達上のある1点での
  み一致する。
  その時、その人の最高水準は、認知能力の抽象的階層の始まり、レベル
  7 : 単一抽象水準にある。

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日本で、M.L.Commonsを一般に紹介した学者はいません。K.W.Fisherも同様です。上の抜粋は、学友舎備品図書からです。日本ではまったく紹介されませんでしたが、コモンズ等の考え方は、英語圏の枠を超えて、ロシア語圏の心理学界でも紹介されていました。
「ゆとり教育」が叫ばれ始めた時、すでに学問的論議がありました。

 ご参考 (グーグル翻訳をご利用ください)

Michael Commons - Model of hierarchical complxity.
  マイケル・コモンズ 階層的複雑性に関するモデル

Hierarchical Complexity of Tasks Shows The Existance of Developmental
Stages.
  課題の階層的複雑性が示す発達段階の存在

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(注1・2)

【4年生の発想・・具体例・・高校入試問題・地理】

平成22年度、群馬県、県立高校入試問題、地理に、ニュージーランドが出題されました。ニュージーランドは教科書には掲載されていませんでした。したがって、テストに載せられた資料を見て考える問題です。

年降水量を示す統計地図と、気温と降水量の年間変化を示すグラフが示されていました。問題の中に、風向きを問うものと、4つ描かれた気温・降水量グラフに当てはまる都市の位置を問うものがありました。

【高校入試問題の論理は小学校5年生のもの】

日本列島各地の、風向きと年間降水量を示すグラフは、小学校5年と中学校で学習します。

これを小学校4年生の自発的考え方で学習すると次のようになります。
風向きについて、夏は右、冬は左と、念仏のように覚え、日本地図の4地点ほどのグラフを、場所とは関係づけずに、北から南へと並べる順番を覚える。その並び方と、日本列島の地理的特徴との関係は問わない。と言ったところでしょうか。

それでも小学校では満点を取れます。それどころか、地理的特徴と降水量の関係をしっかりと学習している人よりも、てっとり早く、正解を「当てる」ことができます。

【こんな極端なこともしばしば】

これは実際にあった事例です。

風向きは、夏と冬を覚えなくとも、夏だけ覚えれば、夏でなければ冬ですから、ある風向きが夏か冬か当てられます。
緯度と気温の関係は覚えなくても、北海道は寒い、沖縄は暑い、新潟は雪が降る、とすでに見聞きしている雑学を確認すれば、正解を当てられます。

新しく身につけることは、夏か冬の風向きだけになります。学校の授業を受け、塾で問題集を解いても、学んだことは風向き1つの丸暗記だけ、という事が生じます。

ところがここで、赤道との位置関係が南北逆転する、南半球のデータを示されると、なすすべがありません。

【ちゃんと学習した人の思考回路】

その年齢なりの思考力を働かせて、図も書きながら学習した人は、風向き・海と山地の関係、空気の断熱膨張と降雨との関係を理解していますから、南半球のデータを示されても、正解を正しく推測できます。

緯度と気温の関係を極地と赤道に結びつけ、風向きと降水の関係を理解していますから、ニュージーランドについて問われても、4つの気温・降水量グラフを4地点に割り振れます。

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【テスト攻略ルール・・・バラバラな知識の記憶と再生】

小学校4年生の思考方法による理解は、バラバラに記憶された物事から成り立っていて、相互の関係づけに欠けます。小学校低学年からすでに知っていたことに依拠していますから、悩みが少なく楽です。

科学として地理を学び、今までの自分の体験と理解を超えて、新しい知識を身につけるのではなくて、テストで答えを当てるための攻略技の工夫と、幼い自己が知っている大雑把な知識の確認が、『勉強』の意味となりはてます。

【「ゆとり教育」がはぐくんだ合い言葉・・ Let it go ! (それでいいのよ)

生徒さんがよく口にする合い言葉は、「そんなこと考えなくともいい、もうできるからこれでいい」です。「ゆとり教育」はこの傾向を助長しました。

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【高校はそうは問屋が許さない】

しかし、高校側はこの事をよく心得ています。そこをついた入試問題を作成してきます。

また、小学校から中学校にかけて、国語の成績がかんばしくない時は、学習の課題を、小学校4年生以前のやり方で置きかえていることがほとんどです。学友舎では、その対策の一つとして、学校教科書とは別の文章を使った国語学習をお勧めしています。
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(注3)
【4年生の発想・・・英語の場合】

英語では、つづり方と音との関係(フォニックス)・文中に単語を並べる順序・意味理解のそれぞれに、小学校4年生の方法が現れます。

【英語と日本語の違いその@・・つづりと発音の対応関係】

日本語のひらがなは、「あいうえお」以外は、子音と母音の組み合わせを、ひらがな一文字で表します。「ka」は「か」です。  --- 「」は文字、『』は発音を表します。
英語の発音記号で書くと、『k+a』です。子音だけの発音は東北などの方言に残ります。

ところが英語には、class の「c」と「ss」のような、子音だけの発音がたくさんあります。

ここでの小学校4年生のやり方とは、laを子音の『l』と『a』に分けずに、ひらがなの「ら」を表す記号(アイコン)として処理します。つづり「ss」の発音は、『s』ではなく『su』=『す』ととらえます。つづり「class」は、発音『kulasu』=『クラス』を表す記憶として暗記します。
   
《よくある自発的発想》
全体の形から意味を連想し、意味が分かってから発音を連想する人も出てきます。

【「猿まね」は最初とても効果的】

この学習方法は、中学入学当初に限れば、以外に、とても効果的です。1学期の中間テストに出てくる単語は数が少なく限られます。
「class」と「classmate」を単語の長さで判断して、それですましていることもしばしばです。
フォニックスの練習をするよりも、てっとり早く正解を当てられます。

【Der Kluge Hans(賢いハンス)は1学期後半に挫折】

このおぼえ方は、似た単語が「class」と「classmate」のうちはいいのですが、「children」・「clean」・「chair」あたりが出てくると、全体の形から
区別ができなくなり、突然「読めなく」なります。こうなると漢字のように書き取りしてもおぼえられません。

 ご参考 Der Kluge Hans (賢いハンス) 日本心理学会オフィシャルサイト

【英語と日本語の違いそのA・・文の構造と意味の流れ】

日本語は、「私は-英語が-好きです。」のように「主語-目的語-動詞」の順に並びます。

一方英語は、「I-like-English」のように「主語-動詞-目的語」の順になります。英語を学習するとは、この違いを理解していくことです。

《漢文英語》
ところが、中学校では、最初からきれいな日本語に訳させるために、漢文を学習するときと同じことが起きます。

中国語は英語と似た語順で並びます。中国語はローマ帝国の残留遠征軍がもたらしたと考える人もいます。

漢文とは、中国語を中国語として学習するのではなくて、日本語に読みかえる練習です。英語でもこの事が起きがちです。

【冗談でなく、しばしば起きる事】

中学1年1学期の中間テストは会話文ですから、文の中の単語数が5つくらいまでです。文の中にある単語の羅列から意味を想像すれば、かなりの確率で当たります。「Do you like dogs?」と「Youlike dogs.」の違いは、疑問符のあるなしで判断できます。

冗談ではなく、中学生にまかせて油断していると、こんなこともしばしば起きます。

(注4)

【4年生の発想・・・算数・数学】

算数では、4年生の発想(すでに身につけた思考方法での対処)は、新しい内容を学習する際に、ほとんど必ず現れます。それは、新出内容を理解するための手持ちの手段ですから、まずは必要なことでもあります。

【可逆操作を拒否したノイマン型コンピュータ】

例えば、小学校4年生で次のような「計算の関係」を学習します。
「ある数に19をたすと25になります。ある数はいくつですか。」

生徒さんが自発的に思い浮かべる、一番「簡単な」方法は、意外とこうです。
「足すとあるから次はきっと引くだ。大きい方から小さい方を引けばよい。」
これでも答えは当たります。

本来の指導内容は、「□+19=25」と、日本語をそのまま式に書きあらわして、補助図を参考にして、「□=25−19」と変形してから計算します。

【年齢にふさわしい思考方法】

5年生になると、「□+19=25」と「□=25−19」から、足し算と引き算が逆の操作であること(可逆性)、を理解して計算できます。掛け算と割り算が逆の操作であることも理解します。

さらに5年生から6年生では、簡単な割合の問題を、計算関係の可逆性を利用して解けるようになります。例えば次です。

「全校生徒の20パーセントがサッカー部に入っています。その人数は30人です。全校生徒は何人ですか。」

ここでの指導内容は、

   全校生徒を□人(あるいはx)として、文章をそのまま式で表します。
   「□×0.2=30」   --6年生は分数20/100を使用します。
   
   次にこれを計算の可逆性から、
   「□=30÷0.2」と変形します。そして答を計算します。

つまり、問題別の解き方を記憶から再生するのではなく、日本語であらわされた意味(現実の数量関係)を、そのまま数学の言葉に置き換える練習です。

【慣れた方法は魅力的・・・最初は優位に立てる】

しかし、小学校4年生の思考方法は魅力的ですから、かたくなにこの方法を拒否することがあります。決して珍しくはありません。「人数を割合で割る」「掛け算で答えが出ない時は、整数を分数で割る」などと言い張ることがあります。

その方が、確かに、新しい方法を練習する面倒くささを省いて、4年生までに身につけた思考方法で、「正解」を当てることができます。実際問題、新しい進んだ方法を練習する人よりも、早く解答できますから、ストップウォッチで測った日には、その点で自信を持つこともあります。

【この点の指導は面倒・・・職業倫理として、とにかく実をとる】

日本語をそのまま式に置き換える指導をしますと、特に成績の良い生徒さん以外は、しばしば、私のことを馬鹿だと思います。答えを直接すぐ出せないわけですから、馬鹿です。その話を聞いて、生徒さんをやめさせた保護者の方もいらっしゃいました。

高校入試問題の解き方や、大学入試問題について話したり、「高崎高校に合格した先輩がそこから発想していた」とか話して、なだめたりすかしたりしながら、進めるはめに良くなります。
月謝をいただいていますから、職業倫理として、私は馬鹿を演じて、生徒さんを練習に乗せることもしばしばです。

【6年生から中学1年生で玉砕】

しかし、言い張っていましても、6年生になり、問題の中の変数が増すと勘違いし、中学校で方程式が出てくると、ちゃんと学習してきた人との差が致命的となり、一時、ほとんどできなくなることがあります。

【中学1年生を支える小学校の学習・・・参考書も大方の塾も言わない事】

じつは、中学1年の一次方程式の理解は、このような小学校4年生からの学習の積み重ねが支えています。すでに身につけた思考方法と知識をあてはめるだけではなく、自己の限界を超えた新しい内容を、尊重し学び取る能力が支えています。

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そこで私は、「目の前のテストで勝つためではなく、未来につながる明日のために勉強しよう」と、どこかのアニメのセリフをもじって、生徒さんたちに言うのでありました。

まさか仕事ですから、思っていても、アニメのセリフのその次は言いません。
 You are distorted ! I will sever your distortion ! (グーグル版機械翻訳)

息子が見ていたアニメ、ガンダム00の主人公のセリフでした。
(英語字幕が学習に利用できるかと思いまして、ここに一度リンクを載せたのですが、ものの数時間でYoutubeから削除されました。インターネットの検閲ってすごいですね)