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最近の授業から(中学生:数学教科書の変化)
2021年9月11日
『新』傾向・・・小学校と中学校のクロスオーバーはめんどくさい
中学1年生は方程式の文章題に入りました。教科書にはいくつかのタイプの問題があります。その一つは「過不足」の問題です。
次のような応用問題です。
(最新の教科書ではありませんが、中学数学教科書は入試・授業改革をすでに先取りしていましたので、内容は同じです。高崎で採用されていました。)
新しい数学@ 東京書籍
ゆとり教育期間の教科書とは『問2』のあつかいが違います。
出版社が異なりますが、高崎で使用されていたゆとり教育教科書の内容は次です。
新版中学校数学1 大日本図書
新しい教科書は例題の説明がシステム教材ふうになりました。ゆとり教科書では『Q1』はおまけ的あつかいで、授業では省くこともありました。
ゆとり教育以前は、定期テストや高校入試は、『Q1』の様に解かなくてもだいじょうぶでした。
ところが現在の教科書はヒントも載せて、考えさせようとしています。
これがまた、中学1年生のこの時期には、難しいのです。たぶん、さっと理解できるのはクラスに数名かと。(中1のこの時期についてです)
難しさは、方程式に比が二つあらわれることです。(分数であらわされた比が二組あります)
新しい数学@ 東京書籍
この難しさは、中学生に教えていれば気づきます。以前の記事でふれた、ゆとり教育以前のシステム教材も、比を二つ取り入れた式の立て方は記載していません。
『良問』とは?・・問題練習と学力養成 @
この問題の学習では、二つのことに特に注意します。
一つは、全体の意味を理解せずに、解き方の形式をまねて覚えようとするかまえ(構え)です。
二つ目は、式の両辺に書かれた比が何を意味しているのか、一つ一つ、確かめてから、式全体の意味を考えることです。変数エックスを具体的な数値に変えて、数直線のイメージも重ねながら、比の意味を確かめます。
小学校の学習内容とクロスオーバーさせます。これが意外とやっかいです。
例題に書かれた足し算と引き算と掛け算の式なら、小学校6年生にもわかります。では、なぜ難しくなるのでしょうか?まねて覚えようという構えがあらわれるのでしょうか?
これについて、文部科学省とこの間の入試・教育改革を検討してきた研究者の方々も、たぶん知っていて検討した、新ピアジェ派という発達心理学派の研究があります。
その学派によれば、二つの比を組み合わせて思考することは、13歳から15歳にかけて可能にになる発達課題です。この課題に初めて遭遇すると、ほぼ例外なく、すでになじみのやり方で、手順をまねる思考方法が現れます。
文部科学省関係者は、『この時期に新しく発達する能力』の育成を、課題の一つとして位置付けた、そういうことでしょうか。
それにしても、この学習指導は、せかさずに、小学校内容と往復する中で進めます。イメージも利用した式の意味の理解を、中学生本人が試行錯誤して進めるように、援助します。指導するこちらも、あせらずに、かなり自制が必要です。
テスト問題と学習方法の色分け
に記した、学習方法の4タイプを、一つの問題を学習する中で、何回か往復することになります。
ご参考
『良問』とは?・・問題練習と学力養成 A
で、またふれる予定ですが、日本ではほとんど目にしない新ピアジェ派の心理学者が、これについてふれた部分を貼り付けます。訳している時間が取れません。あしからず。
高校生で、英語学習として関心がおありの方は、授業の際に質問してください。
ROBBIE CASE . INTELLECTUAL DEVELOPMENT Birth to Adulthood(p.111) .
Kurt W. Fischer. The Development of Abstractions in Adolescence and Adulthood.
In BEYOND FORMAL OPERATIONS (p.66).