--塾長のつぶやき--                                                                                                                                                学友舎高崎(学友舎 lab)
学校がすすめる問題集と活用法
(問題集は冊数が多いほうが効果的なのか?)
                                   2020年12月13日





心理学の研究も引用しながら書こうとしましたら、2か月が過ぎてしまいました。それはまたの機会にして、疑問を感じていることを書くことにします。


     啓林館ワーク             教育同人社ワーク
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●  中学校で教科ごとに学校指定問題集を購入し、おもに宿題に利用するようになったのはいつ頃からなのでしょうか。
塾業界に転職した25年前はすでにそうでした。


私が中学生の頃、50年近く大昔は、「義務教育の無償化」うんぬんが激論されていましたので、このようになるとは想像できませんでした。


●  当時の憲法論争はさておきまして、学習を効果的に進めるという観点から、しばしば疑問を感じることがあります。これは効果的なのかと。






●  主要5教科は通例、まず各学年ごとに教科書に準拠した問題集を購入します。
2年生の12月頃から、受験用の問題集が付け加わります。

後者は、ほとんどの学校で全員購入です。買わないと宿題が提出できなくなります。まれに、希望者のみ購入という中学校もあります。
しかし、各学年の問題集(学校ワーク)は、私立だけでなく公立中学でも購入が必要です。高校も似たりよったりです。






●  それに加えて塾や通信教育がありますから、中学生は大忙しです。おおかたの生徒さん、時には8割くらいの生徒さんが、宿題の提出のために、解答集の丸写しか、それに近いことをするはめになります。


●  以前、2010年頃までは、夏休み宿題ワークの提出率が悪くて、事実上の締め切り(成績に加算する期日)を9月20日頃に設定していた中学もありました。

今から思えば、解答集の丸写しをいさぎよしとしない、生徒さんが多かったからです。最近ここ10年は、きれいに写して、全問に正解の赤丸をつけて提出してもすみますから、どちらがまともなことなのか、時勢の鏡かもしれません?






●  それにしても、納得しようがしまいが解答集を写して書き込む学習方法は、今はやりのアクティブラーニングとは違います。

そこで身に着けた「学習方法」は、高校進学後もいかんなく発揮されてしまいます。大方の私立高校で、数学や化学の定期試験平均点は10点台ですが、これが主犯かもしれません。
中学では通用しても、高校内容の習得には無益です。


プラグマティズム哲学は批判されることもなくなり、逆に評価されていますから、良くも悪くも、これも世の鏡ですか?






●  私が中学・高校生の頃、学校の先生や学習雑誌は、同じ問題集を繰り返し解くことを勧めていました。中学生や高校生はそれでは不安になりますから、幾種類も買いこんでは未消化、ということがよくありました。
高校では私もその一人でした。



●  塾を20年ほどしていると、受験用は5教科が1冊になった厚さ3センチ弱の問題集で、地域のトップ高校に合格した生徒さんを何人も見てきました。その方たちは、1年と2年の時に使用した教科別問題集を復習していました。

受験勉強を義理でしていた中学生の私も、5教科1冊版でした。その時のばちが当たって塾をしているのだ、と言われたこともありますが・・・・・

文英堂問題集
               文英堂ホームページ





●  人間の記憶や認知のメカニズムに触れなくても、身に着けるためには何回も繰り返すことが必要です。


●  もう40年近く前に心理学的に実験した研究者がいました。
当時の心理学の授業では、同じ学習内容について、一つの教材を繰り返すのか複数の教材を使用するのか、その効果は、学習者がその内容について得意かどうかで決まる、と言われていました。


ものすごく得意な場合は、教材をかえて同じ内容を学習すると効果がある。ふつうは、同じ教材を繰り返した方が応用力も身につく、という研究結果でした。
これはたしか、当時の記憶・認知心理学の国内権威だった、京大教授の持論だったような。


記憶忘却の法則性と一般化能力の個人差から説明されていましたが、細かなお話はまたの機会に。






●  学友舎では、中学3年時に、数学・英語・古文漢文については、薄手の受験用問題集を使用します。(過去問は試験当日の練習として使用します)


●  1年から3年までに使用する通年用問題集が、受験対策にも使用できるように編集されていますので、それを繰り返し復習に活用しています。






●  人間は、何かを学習する際に、過去の具体的な学習状況の記憶、その場所や教材や教師の説明、そこで自分が抱いたいくつもの疑問・・・・全身の感覚と結びついた過去の記憶にささえられて学習を進めます。


入力された規則を貯蔵してメモリーに呼び出すコンピューターとは違うと思うのですが・・・・・人は、忘れることはあっても、過去の記憶を単純に上書きはしません。
それまでのすべての経験をささえにして、新しいことと折り合いをつけながら発見していきます。たとえそれが無意識のプロセスでも。






●  教材会社や出版業界の方々の生活がかかっていますから、何とも言えませんが、もう少し良い策はないものでしょうか?


いずれにせよ、あと数年で、今まで40年以上、学校専用ワークと教材を販売してきた中小出版社は、EdTech 業界にとってかわられますね。きっと、あっという間に。GIGA スクールの先倒しで。新境地ですね。






 問題集に関連した「お知らせ」のいくつかです


 問題集の編集方針のタイプと選択に際しての配慮   2017年11月26日

 1年生と2年生の方へ、学校の学年別教科ワークは捨てないでください
                             2017年11月12日

 学校ワークを家庭学習するための練習から、身につけるための学習方法の練
 習へ移りました                    2017年7月30日

 夏休みの宿題を利用して、わかるだけでなく、身につけるための徹底的学習
 の要領を練習します                   2017年7月30日

 学校ワークと学校の宿題をしても成績が今一つのメカニズム
                             2017年7月31日

 中学2年生・・学校指定-受験対策問題集への対応について  2016年12月31日

 一部中学校の受験用学校ワーク(歴史)のご利用方法について 2015年6月23日