--  お知らせ2015 --
 



最近の授業から
 (中学生数学 「単位量当たりの大きさ」から「割合」への発想の転換)
                                 (2015年10月28日)

次のような問題について、小学校の教科書に載っている「単位量(1)あたりの大きさ」から考える発想を、「割合」と「比例」についての理解を基にしたものへと進めています。 (1年生は「比例」を学習した後に進めます)


高校入試で問題を解く際の実際の考え方につながるように、また、高校進学後の数学・化学・物理の学習とのつながりに配慮しました。

「単位量当たりの大きさ」からだけ発想すると、中学と高校で方程式の問題を解く際に、式を立てる事が難しくなります。
あるいは、意味は分からないまま形式を思い出して、方程式を「あてている」ことになりがちです。


具体的には次のような問題です。
『定価a円の品物を40パーセント引きで買ったところ、支払った金額は500円でした。定価はいくらですか。』

小学校の教科書に書かれた方程式の立て方にしたがうと、次のようになります。
 a×(1−0.4)=500
式の中の1が「単位量当たりの大きさ」として考える際の特徴です。

小学生と中学生に「この1とは何か説明してください」と問うと、説明できない事がほとんどです。
「基にする量は1だからだ」とは答えますが、なぜ基にする量はパーセントでも歩合でも1なのか質問してみると、説明できる生徒さんはまれです。当たり前のことを聞くな、と言う顔をされてしまいます。


この式の立て方から発想すると、すこしばかり難しい問題を解く際に、応用がきかずに間違えがちです。
まずこの式の立て方を思い出すために、それが足を引っ張って、推論をまちがえてしまうこともしばしば起きます。


そこで、小学校で学習した式の立て方に加えて、次のような考え方を練習します。
「40パーセント引いたから60パーセント残った。60パーセントとは60/100 倍のことだ。
したがって、a×60/100=500」


学校ワークの解答例や、通信教育等の説明と多少異なるかもしれません。
小学校5年生で習った便宜的な式の立て方からの飛躍です。

文部科学省のサイトにある学習指導要領の解説は、この考え方の便利さにふれています。中学の教科書にも以前から書かれています。

問題は確実に速く・よく解けるようになります。高校に進んでからの学習にも役立ちます。

シェア・ナンバーワンの通信教育は、以前から、成績優秀者向けの発展コースの解説書の中で、この考え方を成績向上のコツとして教えています。

よろしくお願いいたします。               (2015年10月28日)

   ---------------------------------------------------------


「単位量当たりの大きさ」と「割合」の区別につきましては、次の方のサイト記事をご参考ください。シリーズ記事です。
   参考@  参考A  参考B

   ----------------------------------------------------------

次の方の論文も参考にしました。
数学者から見た「算数教育」について (早稲田大学) 曾布川教授


認知発達心理学では、12歳前後に数学的な思考力が一つ上のレベルへと変化することが示されてきました。(pdf 77ページの図1に典型的な年齢区分が示されています)

それ以前の「単位量当たりの大きさ」から考える方法から、分数であらわした比(2成分のベクトル)を使って考えられるようになる、と明らかにされてきました。