--  お知らせ2016 --
 



【中学1年数学についてご質問を受けました
「基礎的な計算の習熟ペース個人差と、軽度の失計算(dyscalculia)への学友舎
 の対応」】                       (2016年9月4日)
 
  ・・・この分野は、日本語に翻訳されていないことが多いため、参考リン
  ク先は英語が多くなります。
  かっこうをつけているわけではなく、日本の学界の実情からいたしかたあ
  りません。
  あしからずお願いいたします。
  J-STAGE(科学技術情報発信・流通総合システム)で検索しましたが、失計
  算(dyscalculia)の研究はヒットしませんでした。
  KAKEN(科学研究費助成事業データベース)で検索しても、失計算そのもの
  (dyscalculia・計算障害)の研究はありませんでした。

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中学進学後の、教科書に載せられているような基礎的な計算の、習熟ペースには個人差があります。

各単元の計算を15分ほどの練習で習得していく人もいますが、平均的には、学校のペースに合わせてだいたい間違えないようになり、夏休みの復習で難問以外はできるようになります。
(ここでの難問とは、公開された模擬テストのデータが示す、正答率1割から4割の問題です。)

四則計算(+−×÷)と分数と小数が混ざった、長い計算は、もう少し時間がかかります。
1年生の3月に復習して、2年生の最初の文字式の計算を練習することで、2年生の夏休みには、難問もほぼできるようになります。

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中学へ進学してから、以上のような平均的なペースで習熟せずに、計算につまずく場合、その原因にはかなり個人差があります。


目次 ・つまずきの要因
      @/4 単に忘れること
      A/4 神経系のタイプと成熟の速さの個人差
      B/4 視覚・運動系の弱さ
      C/4 失計算(計算障害)
   つまずきのポイントと対応
   計算障害についての海外の対策と研究の流れ


【つまずきの要因】

【@/4 単に忘れること】

繰り返し練習をしなかったりゲームをしすぎたりすると、覚えられず、つまずきます。慢性的な明け方の睡眠不足も、数学の問題を解くプロセスを覚えるには不利です。


学習を進める中での、日常のささいなことが忘れるかどうかを左右します。

学友舎では、算数・数学の問題を解く際、A4版の計算用紙に、問題に取り掛かる際のポイント・計算過程・ヒント・解いた後のまとめと反省などを書きとめます。

成績がすぐ伸びる生徒さんは、家庭で復習しようと、単純な筆算に使用した用紙以外、それを持ち帰ります。

逆に、すべてをきれいに整頓して置いていく場合、理解したことも忘れますから、同じことを何回もくり返すことになります。


また、算数・数学の勉強に、個人的な生活の質にかかわる、社会経済的価値を見つけないと、すぐ忘れます。

   スポーツの習得スピードに個人差があるように、教科学習の習熟ペース
   にも個人差があります。習得に必要な繰り返し練習回数は、平均的には
   日を変えて3回ですが、十人十色です。
   医療や軍事分野では、脳に外部から電流を流して刺激したり薬物を投与
   して、学習に関係した脳部位の活性を高め、繰り返し練習の回数を減ら
   す研究が進められています。

   映画のような話ですが、学会報告もされていて、それなりの成果をあげ
   ています。
   医師資格がないと実施できません。

   学友舎では、手・眼球・体の動きを利用して練習することがあります。
   また、空間的な位置関係の枠組みを思い浮かべる練習をすることがあり
   ます。

   それは一つには、このような研究で活性化させた脳の活動を、電流や化
   学物質を使用しないで高める工夫です。

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   余談として、日本では表立っては科学的検討の対象にされませんが、海
   外ではオメガ3脂肪酸投与で失読症を改善させようとしたり、ビタミ
   ン・ミネラル投与学齢期の健常児の認知能力をドーピングする研究は
   盛んにおこなわれています。
   ビタミン・ミネラルは算数・数学(流動性知能)と関係があると推測され
   ています。

   海藻や魚をたくさん食べる日本人にはあまり関係ありませんが、海外に
   は、ヨウ素を飲ませて小学校高学年児の認知能力を高めようという研究
   もあります。


   また、睡眠について、米国小児科学会は、中学と高校の活動開始時刻を
   8時30分以前にしないように勧告しています

   睡眠レベルの学習への影響については諸説あります

   欧米諸国ではレム睡眠の必要性にこだわる人たちがかなりいます。レム
   睡眠の必要性を認めると、明け方の睡眠を削ることは学習・運動能力を
   下げる、と推測されます。

   日本は、そのような研究者の方もいらっしゃいますが、睡眠開始後の初
   期の睡眠を強調する方が多く、明け方のレム睡眠を削ることに意欲的な
   方が多いようです。

   総じて、栄養状態と睡眠の取り方は学力を左右します。
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【A/4 神経系のタイプと成熟の速さの個人差】

理解力に優れていてまじめでも、神経系のタイプが疲れやすいと、短期間にこなせる練習量と学習範囲が少なくなり、つまずくことがあります。

特定の科目についてか全教科についてかは、個人差があります。

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また、成長期は体の発育の速さに個人差があるように、脳神経系の成熟の速さにも個人差があります。神経細胞の軸索のミエリン化と関連していると言われています。
成熟が速い人はその学年の教科内容を比較的苦も無く学習しますが、遅い人は習得する時期が遅れることがあります。

数学の問題を解くとき、問題を解決するまでのステップは何段階かになります。B問題はA問題に比べて必要なステップ数が増えます。
ここで、脳神経系の成熟速度の個人差が影響してきます。成熟が早いと遅い人に比べて考えられるステップ数が増えます

自分一人では考えられないことも、教師から説明を聞くと考えられます。理解できる思考のステップ数が増えます。
成熟が遅くても一つステップを加えることはできます。2つ以上加えるとなると速い人にはかなわなくなります。

説明を聞いてくわえることができるステップ数より思考のステップが少ない解き方はかんたんに記憶されます。自分一人でもすぐ考えられるようになります。
くわえられるステップ数ぎりぎりかそれを超えると、本人も信じられないくらい忘れます。誰かといっしょにするとたやすく理解できても、一人でするとわからなくなります。


問題を解くときの思考のステップ数を増やすには、どんな練習が役立つでしょうか。意外ですが、難しいこと、言いかえると自発的に考える時よりステップが多い問題を練習することは効き目があまりありません。

自発的に問題を解くときに思考をささえているのは、1ステップ簡単な思考力です。自発的に可能な思考力とは、1ステップ簡単な問題を組み合わせて考える思考力です。
1ステップ簡単な問題に習熟する練習が、思考のステップ数を増やす近道です。

成熟が早い人は、今の学年の標準的な問題を解くことがそれにあたります。成熟が遅い時は、今の学年の基礎問題を以前の学年へさかのぼる復習と組み合わせて練習すると効果があります。
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【B/4 視覚・運動系の弱さ】

視覚系に何らかの弱さがあると、数字や数直線を読み取る際にぼやけてしまったり注意力をたくさん働かせて推測するため、それが原因でつまずくことがあります。


   近視用メガネの度が強すぎて、本を読む距離で視覚像がゆがんだり、ピ
   ントを合わせるために眼の調節系に無理を強いられると、似たようなこ
   とがおこります。
   また、この場合疲れるため、勉強に集中できる時間が短くなります。

   長時間勉強する学生時代は、パソコン眼鏡もかねて、レンズの中心を手
   元を見る輻輳角に合わせた、近距離用の度の弱い眼鏡を併用する、とい
   う選択肢もあります。
   (リンク先と学友舎は営業的関係はありません。)


視覚系ではありませんが、5分すぎたら書いた本人が判読できないような乱雑な数字や、極端に大きいか小さいかする数字を書いている場合も、視覚系の弱さと同じようなメカニズムで、つまずきがおきます。

この場合、学年が進み、作業記憶に問題の解答に必要な項目を記憶しきれなくなると、突然のように学習困難におちいります。

それまでは習得の速さはかなり遅くなりますが、学習自体は成り立ちます。
暗算が得意なケースがほとんどですが、遅くとも中学3年生の中頃までには、
無理をきたします。
 
 中学3年の中頃からかきながら考える練習を始めたケースでは、小学校中学
 年で練習する補助図や計算式を、フリーハンドで的確に書くことができない
 場合があります。
 それ以降の学習にハンディを負うことになります。


  まれに、文字の読み取りと理解はできて、書くことだけが苦手な軽度の
  書 ( dysgraphia)が疑われることがあります。
  (学友舎講師は、医師や臨床心理士ではありませんので、学友舎では診断は
  できません。)

  その場合、視覚系ではなく手の運動感覚系の弱さから数字を書かなくなり
  ます。
  その結果、より進んだ数学を学習する際に、数式や図を書いて思考の際の
  視覚的な補助とすることに支障をきたし、視覚系に弱さがあるケースと似
  た所でつまずきます。

  視知覚的には問題がありませんので、暗算でこなすと、途中を書くより早
  く答えが出せることが多い、小学校の算数は「得意」なことが多いようで
  す。

  失書は、日本語の国語表記システム(漢字とひらがな)から問題があまり表
  面化せず、日本ではほとんど検討されてきませんでした。
  ほとんどのケースは、生徒のさぼりあるいは指導の失敗として処理されて
  きました。

  KAKEN(科学研究費助成事業データベース)で検索しても、2011年からの
  研究プロジェクト報告しかヒットしません。

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 算数・数学教育における「描くこと」の役割(認知能力と身体運動の関係)
 は、近年、高次脳機能障害のリハビリ人工知能によるロボット制御の開発
 で注目されています。
 (算数教育が直接研究対象とされているのはごく一部(pdf)です。)

 さかのぼること60年ほど前に一部の心理学者が盛んに研究していました。
 1970年代にアメリカに紹介され(pdf)サイバネティクスの理論と結びつ
 いて、英語圏では半ば常識化しました。

 小学生と中学生のみなさんと算数・数学を学習していると、算数と数学の学
 習を支えるイメージ描写力や、手や体の移動イメージを使った直感的理解の
 大切さ、に思い至ることが多いのですが、小中学校の教科書やワークに書か
 れることはあまりありません。

 学界では花盛りですが、教育界では目に触れることの少ない話題ですので、
 いくつかリンクを
 あげてみます。@ A(pdf) B(pdf)

よほど公開したくないらしく、リンクがしばしば変わります。また非公開になります。時間があるときに調べてみますが、IT教育、GIGA教育との関連から、ネット空間から削除されたかもしれません。これ、嘘みたいな本当の話です。

                           ≪ back目次へ戻る


【C/4 失計算(計算障害)】
失計算については、日本語サイトと論文がないため、リンク先はほとんど英文になります。

失計算(全般的知能には関係ない計算についての学習障害)のこともあります。

この場合、4個以下の物やその模式図を見て、1,2,・・と数えずに数量を把握することが苦手です。

また、数直線を書いて数の関係を大まかに比較することが苦手です。
いわゆるタイル図テープ図の意味を理解するためには、時間をかけて練習する必要があります。
    Dyscalculia---A Parent's Guide (YouTube)

   アメリカ合衆国では、同世代の6%から7%が失計算と推測されていま
   
   研究の歴史が浅く、日本では厚生労働省日本小児神経学会も統計を把
   握していません。
   海外ではよく知られているapproximate number systemにいたって
   は、ネット検索しても日本語訳はこれしかヒットしませんでした。
                           ≪ back目次へ戻る

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【つまずきのポイントと対応】

いずれも、つまずきのポイントは次のような点です。
@からCへ行くにしたがって、つまずく人が多くなります。

@正の数と負の数を、日常生活の中で大まかに把握する。
(プラスとマイナスのカードゲームの比喩がわかる。現実生活の中の、反対の事を正負の関係に位置付けられる。)

A数直線の直感的理解を支えとして、正の数と負の数の加減と乗除の意味を理
 解する。数直線の長さが、数の概算した比をらわしていることがわかる。

B数直線や数ゲームの比喩を利用した理解から類推して、計算規則の形式的な
 操作の意味を直感的に納得する。

C正の数と負の数の、加減の計算規則と乗除の計算規則を区別して、加減乗除
 が組み合わされた計算ができる。
 小学校で学んだ四則計算の規則と、正負の数の計算規則を組み合わせて考え
 られる。

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つまずきへの対応は、つまずきのポイントにより工夫します。

@からBまでのポイントでつまずいている場合は、「シンガポール数学」に見られるような、具体物の教具や模式図(テープ図など)を支えにして考える練習をします。


学友舎の指導は、図を使用した説明と思考方法のモデル化が多くなります。
また、学友舎で採用している小学生用教材は、「シンガポール数学」に準じるような、模式図による説明が採用されています。

特に低学年では、具体的イメージの操作として理解できるような工夫がされています。
これは、近年失計算の研究で言われている、量の計算能力を支える「概算量把握システム(approximate number system)」の機能を働かせることに通じています。

   AからBは、11歳から13歳になると、脳神経系に遺伝的にプログラ
   ムされた、人間に共通のメカニズムが発現して理解できるようになりま
   す。

   小学校の6年生で正と負の数を学習する国もありますが、12歳になる
   と大部分の人が短期間の練習で理解します。
   そのため、能力別学級編成をしていない日本では、中学1年生で学習し
   ます。
   (中学1年生の初めには習得できない人が残ることは、前提のカリキュラ
   ム編成です。)

   学習塾の業務の一環として、中学1年生で学習する、正負の数の加減乗
   除を組み合わせた計算を、小学校何年生で、どれくらいの練習時間で、
   (まねではなく)理解してできるのかについて、複数の児童で実際に試し
   て大雑把ですが把握しています。
    (私立中学受験で特殊算対策として、また、中学1年生への指導法が適
    切か検討するために行いました。)

   小学校6年生になると、かなりの方が、中学1年生の10月に学習す
   る、正負の数がかかわる一次方程式が解けるようになります。
   小学校5年生になると、早生まれの方には難しいことが多いですが、正
   負の数の加減の規則と乗除の規則を区別して計算する初歩は、20分か
   ら30分の練習で、猿まねでなくできるようになります。

   小学校5年生のなかばから、とりあえず、正負の数の加減算と乗除算を
   ランダムに連続提示した場合、30分ほどの練習で、適応する計算規則
   を混同しないで計算できるようになります。
   (中学の教科書にそった練習でなく、学友舎の方法によります。)
   失計算(dyscalculia)の場合、この理解と練習に数か月以上かかることが
   あります。


   @は、幼児のころからある、量を把握する機能に依存している、と推測
   されています。
   脳の頭頂間溝(intraparietal sulcus)が主な機能を担っている、とわかり
   つつあります。
   機能的磁気共鳴断層撮影法(fMRI)により研究が進められています。

   この機能が弱い場合は、教科学習の教材に加えて、別の工夫が必要なこ
   とがわかりつつあります。また、同時に失読(dyslexia)の場合がありま
   す。


   経験的には、中学1年でつまずきが顕著になったケースでは、小学校3
   年から4年配当の、割合が出てくる以前の数量関係の問題を、タイル図
   や数直線、問題に応じてチャート図を描かせながら解くことが有効で
   す。

   タイル図や数直線は、フリーハンドで可能な限り大ざっば(抽象的)に描
   く方が効果的です。

   タイル図や数直線に、目盛りの数値をすべて書かせていると、概算量把
   握システムの働きをさらに弱め、学習能力が退行または遅滞します。
   定規を使用して図や直線を描き続けると、同様なことになります。

   中学1年で顕著につまずく際の要因は、11歳から12歳に習得される
   比(2つの数のベクトル)の理解ではなく、それ以前の数量関係の理解(量
   の空間的関係モデルの表象力)に関連しているようです。


   学友舎ではこのような教材も用意しています。
   教材出版社は早期知育を想定していますが、「別の工夫」の一つとして
   利用しています。


Cでつまずいている場合は、通常のつまずきはほとんどここですが、問題のタイプは減らさずに、問題数を減らして、時間をかけた繰り返し練習を徹底します。
算数・数学の学習は、それまでは年齢的にできなかった、複数の数学的操作を組み合わせて考える練習ですから、Cのつまずきは、学習を進めるにあたり普通の事です。

   Cにかかわる数学的学力は、脳神経系の髄鞘化とそれにともない脳の複
   数部位の結びつきが変化する結果獲得される、と30年前は仮定されて
   いました
   この15年間ほどに実証されつつあります。

   生得的にプログラムされた、年齢的な脳神経系の成長スケジュールにそ
   って、作業記憶(ワーキング・メモリー)の機能が高まります。
   その結果、複数の思考操作を同時に働かせる能力が発現して、今までは
   年齢的な制約からできなかったことが、できるようになる、と推測され
   ています。@ A B 


いずれも、最初からスピードを競わせますと、応用の効く本当の理解ではなく、手続きの丸暗記になりがちです。

スピード追及のこの一面は意外と無視されていますが、その時は「効果的」でも、学年が進みより高度の数学を勉強する際に、学習の足かせになることがしばしばあります。
せかすことは避けています。             ≪ back目次へ戻る

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【計算障害についての海外の対策と研究の流れ】

学友舎の小・中学生の算数・数学学習は、失計算(dyscalculia)についての研究や、「シンガポール数学」をはじめとした、具体物や図式を利用した学習法も参考にしています。

   失計算について今まで有力だった研究の流れ

   失計算についての研究の最近の傾向

  「frontiers」に載った6か国の研究者によるレビュー

小学生向けには、半具体物を使用した教材や図式によるモデルを利用した教材が売られていますが、中学生以降になるとほとんどありません。

失計算(ディスカルキュリア)についての研究も歴史が浅く、指導方法が確立されているわけではありません。
イギリスのある大学は指導法の一つとして、シンガポールの算数指導方法をあげています。

   英語圏の教育的介入についてのレビュー

   ドイツ語圏の教育的介入についてのレビュー


実際の授業では、つまずきを具体的に把握して、参考にできるものはすべて参考にして工夫します。
ケースにより、試行錯誤の連続になることもありますが、工夫を続けています。

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   今年度の夏休み期間は、研修の一環として、失計算(dyscalculia)をめぐ
   る研究を調べてみました。
   日本の心理学・教育学関係は、基本がアメリカの後追いですので、英語
   圏の研究と教育機関を調べました。

   アメリカ・National Center on INTENSIVE INTERVENTION (pdf)

   イギリス・ケンブリッジ大学 Centre for Neuroscience in Education 

   失計算について第一人者と目されるイギリスの研究者
   B.Butterworth教授

   ホームページ The Mathematical BRAIN
   雑誌Science掲載概説 Dyscalculia:From Brain to Education (pdf)
   学界誌COGNITION掲載論文(共著)
   Developmental dyscalculia and basic numerical capacities (pdf)
   学界誌Journal of Child Psychology and Psychiatry掲載論文(単独)
   The development of arithmetical abilities


   その中で、日本の算数教育史と、ゆとり教育のころからの数学教育の流
   行について考えてみました。

   ゆとり教育のすきまを縫うかのように、「カゲヤマメソド」の100ま
   す計算とストップウオッチの活用が流行しました。

   その頃、欧米の数学教育に関連した行政機関と学校は、英語圏のシンガ
   ポール数学の研を受けるなどして、シンガポールの初等教育での算数
   教授法を取り入れようとしていました。

   いわゆる「シンガポール数学」ですが、それは戦後日本の数学教育界で
   よく利用された教具や図式を利用した、教授法によく似ています


   シンガポール数学も独自な工夫のメインは小学生の指導体系のようです
   が、中学以降の数学的思考を学習する際の、直感的理解のための具体物
   や図式による支え、を身に着けさせる意図があるようです。


  「カゲヤマメソド」とは、欧米流の計算の暗記とドリルによる初等教育
   の、焼き直しが流行したのかもしれません。


   学友舎は、流行と立場にとらわれることなく、幅広く情報を検討して、
   会員のみなさんの算数・数学学習を工夫しています。

   一方、小学校にコンピューターのプログラムについての学習が導入され
   る予定です。
   その対策として、プログラミング言語C言語について、初歩ですが研修
   を始めるなど、教育界のこれからを見すえています。
                                  (2016年9月4日)