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日本版ワーキングメモリーの闇
2014年9月
ワーキングメモリーの学習への応用例
ワーキングメモリーの日本国・大学院入試・模範解答的・解説( 定説)
日本では一般に紹介されない、世界的に有名な2人の心理学者
パスカル-レオネ(リオン)
ロビー・ケイス
ワーキングメモリーについて、「雑談とつぶやき」です
最近は大手学習塾の公式サイトでも、盛んにワーキングメモリーについて書いています。はやりのようです。
その物言いに違和感を感じていましたので、ワーキングメモリーについてはあまり触れませんでした。
自分の専門として30年前から興味がありました。30年前の人気のなさを顧みると、こんな形でこんなに流行し、心理学者の飯の種になるとは、思いもよりませんでした。
学会までできました。
日本ワーキングメモリー学会
心理学が進歩することは、私も興味がありますし喜ばしいことです。しかし、何と言いますか、教育に役立ちそうな本当に面白いところは、なぜかいまだに、日本では一般には紹介されません。
その一方研究者は、企業と提携して、マン-マシーン・システム開発の基礎研究を、最先端磁気共鳴イメージング装置を使用して、行っています。
参考リンク
神経磁気刺激法を用いた高時空間分解能
装置の開発 ( 広島市立大学情報科学部 桶脇治教授 )
RIKEN BRAIN SCIENCE INSTITUTE ( 理研脳科学研究所 )
ワーキングメモリーの学習への応用例
参考サイト・論文
児童生徒のワーキングメモリと学習支援
( 広島大学 )
算数の知識を獲得するためにはどんな順序で教えるのが良いか
( CHILD RESEARCH NET )
学友舎Lab.は関係ありません。
特性による教科学習の難しさ ( 算数・数学の例
)
( 茨城県教育研修センター )
こんな話があるようです。ワーキングメモリーの学会公認定説とその教育への応用です。
塾で教えている身としましては、実は、何が言いたいのだか今一つわかりません。ワーキングメモリーとは、あってもなくても変わらない流行語でしょうか。
ヒューリスティック
な概念と人間の心理機能の混ぜご飯に見えます。
ワーキングメモリーの日本国・大学院入試・模範解答的・解説( 定説 )
参考サイト
短期記憶のメカニズムを説明する基礎理論
ES DISCOVERY Web site
記憶心理学の主流は、コンピューター設計(本体とプログラム両方)のためのアイデア論議ですから、定説的解説を読んでも、生きている人間の姿が分かるかどうかは疑問です。
ここに出てくるバドリー教授は有名です。
ヨーク大学のサイト
でお顔拝見。
日本では一般に紹介されない、世界的に有名な2人の心理学者
次の2人は、なぜか、日本では一般には紹介されません。邦訳本がありません。上に載せたリンク先にも登場しません。ほぼ完全にタブー状態です。
パスカル-レオネ(リオン)
紹介サイトでお顔拝見
JuanPascual-Leon
e
ご表情と写真背景から察しますに、かなり酒飲みのようです。直接聞いたわけではありませんので、事実は知りません。
海外ではこの人なしには、ワーキングメモリーは語れません。この博士は、ワーキングメモリーではなく、
M-power
とか
M-capacity
と呼んでいます。
何せ、さかのぼること1956年、心理学者ジョージ・ミラーが
マジカル・ナンバー7
として、ワーキングメモリーの容量が7プラスマイナス2だと論文に書いて以来、ワーキングメモリーの元祖の一人です。
何と、有名な心理学者
ピアジェの弟子
でした。(
日本ピアジェ会
)
The Psychological Unit and its Role in Task Analysis:
Reinterpretation of
Object Permanence
課題分析における心理学的単位とその役割:対象の永続性についての再考 2013
しかし、M-powerのネーミングがいらぬ誤解を生むようで避けられたのでしょうか。英語・フランス語・ドイツ語・ロシア語圏の認知発達心理学業界で、この人を知らない人は、多分いません。
なぜか、日本国内では口にしないことがお約束のようです。もう40年近いはるか昔のことですが、某大学の博士課程試験で、M-powerを口に出したため、敵意むき出しでけなされまくった思い出があります。
例外的に、早稲田大学関係者の方が邦訳していたようです。見る限り日本語にしずらかったようです。( これは機械翻訳でしょうか? )
A developmental theory of mental attention.
Its application to measurement and task analysis
( 邦訳版 )
心的注意の発達理論 測定と課題分析への応用
なぜか日本語版がありません。
Divergent Validity and the Mesurement of Processing Capacity
弁別的妥当性と処理容量の計測 1997
Reflections on Working Memory:
Are the Two Models Complementary?
作業記憶についての再考 二つのモデルは相補的か? 2000
Mental Attention,Multiplicative Structures, and the Causal Problems
of
Cognitive Development
心的注意、倍加的構造、認知発達の因果関係に関する諸問題 2010
この博士は、教育実践への応用にはあまり関心がありません。M-powerは有名ですが、本人がどこまで本気なのかは、論文を読む限り私には?マークです。
もっとさかのぼれば、
ボールドウィン
やワロン (
@
、
A
)が、19世紀から20世紀前半にかけて、ワ ーキングメモリー容量の発達の元祖的なことを考えていました。)
ご参考論文 ( ワロンについての紹介記事 )
直リンクが禁止されているため、題名でご検索ください。
フランス国立高等教育研究省の人文科学関係論文サイト
An Appreciation of the interpersonal Psychology of Henri Wallon
「
子供の思考の起源(上)明治図書1968
絶版
「
対」の概念による「対話」分析の検討を通して
( 香川大学教育学部 西岡けいこ教授 )
ワロンも日本では無視されます。地元フランスやヨーロッパ・ロシア圏では業界常識です。
若かりしパスカル-レオネはボールドウィンやワロンも踏まえてM-power を提唱しました。
それにくわえて、犬の条件反射で有名なパヴロフの、
神経系の興奮と抑制のダイナミズム理論
の、どうやら後継者でもあるらしいことが、日本と世界の一部の学界で右からも左からもニグレクトされる原因かもしれません。
(日本語で検索しても、パブロフの「大脳の興奮と抑制のダイナミズム理論」にふれた解説はありません。これもまたタブーです。)
ロビー・ケイス
ワーキングメモリーについて、幼児期から青年期にわたって、教育実践分野で実験研究をして、オリジナルな理論を提唱した、カナダの博士です。
すでに故人です ( 2000年没 )。
研究生活の初期から、教育実践の中で検証を進めてきたところが、ワーキングメモリーというアイデアを取り入れている学者としては異色です。
実は、塾で指導方法を工夫する際に役立ちますので、以前から参考にしています。
これもまた、日本では一般には紹介されない、
K.W.Fischer博士
とはお友達で、研究もお互いに参考にしています。
K.W.Fischerはハーバード大学の大学院教授で欧米では有名ですが、なぜか、日本の心理学・教育学界ではほぼ完全に無視されています。
多分、すでに引退した彼の研究が、日本ではやり始めた『アクティブ・ラーニング』を、すでにほぼ完全に先取りし、はるか先まで到達しているからです。
人はしばしば、集団で、先を行く他者を認めずに、できるなら抹殺します。
K.W.Fischerの次の論文を読めば明白かと思います
。
論文@
論文A
また、K.W.Fischer, Juan Pascual-Leone, Robbie Case に触れることは、『アクティブ・ラーニング』の
忌避される秘密
へと導かれてしまいます。
ロビー・ケイスは日本ではなぜか紹介されませんが、
学際的
で、知的に刺激的です。海の向こうでは有名で、
紹介VIDEO
さえあります。
全部見るには、フリートライアルを利用するか、視聴料を払う必要があります。途中まではタダです。
こんな本まで出版されています。ただで読めます。
The Developmental Relations among Mind, Brain, and Education
:Essays in Honor of Robbie Case
心と脳と教育の発達的関連 ロビー・ケイスに敬意を表する小論集 2010
多分唯一の例外は次のサイトです。
発達理論の学び舎
ただし、サイト主の方は、労務管理を含めた成人期の心理的適応問題に興味がおありのようです。ケイスには批判的です。
学友舎 Lab. はこのサイトの主催するゼミナール等には一切関係ありません。
そこで紹介されているハルフォードは、ロビー・ケイスもその研究を参考にしていました。
ロビー・ケイスは認知能力の年齢的な構造変化に主な関心がありましたが、ハルフォードは
並列分散処理を語る
など、認知構造の実態としてのメカニズムに関心がありました。
Complexity in Relational Processing Predicts Changes in
Functional
Brain Network Dynamics
2013
リンク2
関係処理の複雑性は脳機能ネットワークの動態変化を予測する。
Recent Advances in Relational Complexity Theory & its
Application to
Cognitive Development
2008
関係の複雑性理論と認知発達へのその応用の最近の進歩。
ハルフォードも日本では無視されています。
ハルフォード自身もネオ・ピアジェシャンですが、ハルフォードのネオ・ピアジェシャンについての考察は、次にまとめられています。
Information-Processing Models of Cognitive Development
認知発達に関する情報処理モデル 2011
ロビー・ケイスの研究と理論は、日本では一般にはおおやけにされません。そのあたりの事情は、次の研究会のサイト記事や心理学論文から推測されます。
認知発達理論分科会 第5回例会報告
2004年 心理科学研究会
知的行為の形成理論と教育プログラムへの適用
( 神戸大学 城仁士教授 )
ロビー・ケイスが研究と理論をまとめた書籍を出版してからはや29年。一冊も邦訳本が出版されないとは不思議です。
下に挙げます2番目の参考文献、その序文によれば、
ドイツのマックスプランク研究所
の会議城
(
Ringberg Castle
)
で、この文献を出版するにあたり国際会議を開いています。もちろん研究所から研究費も出ています。
とりあえず、田舎学習塾の一講師も
ネット古本屋さん
で論文を購入して読むことはできました。
ワーキングメモリーについてのノウハウは、マン-マシーン・インターフェイス設計時の生命線ですから、その絡みであまり公開されないのかもしれません。( 特許や軍事機密の関係から )
マン-マシーンインターフェイスについての参考論文
認知的インターフェイス
( 立命館大学理工学部 手嶋教之教授 )
ヒューマン・インターフェイスにおける認知的基盤
( 専修大学ネットワーク情報学部 上平崇仁教授 )
以下、日本語版がないのがネックですが、ロビー・ケイスご参考論文。
THE STRUCTURE AND PROCESS OF INTELLECTUAL
DEVELOPMENT
知的発達の構造と過程 1987
Capacity-Based Explanations of Working Memory Growth:
A Brief
History and Reevaluation
作業記憶の発達に関する容量に基づく説明:概略と再評価 1995
クッキーを有効にすると、一番刺激的なところを読めます。
The Development of Conceptual Structures
概念構造の発達 1998
Theories of Learning and Theories of Development
学習諸理論と発達諸理論 1993
ロビー・ケイスのように、ワーキングメモリーのセントラルプールを仮定する研究は続いています。
Evidence for a centralpoolof general resources in working memory
ワーキングメモリーにおける汎用リソースのセントラルプールの証拠 2012
The roles of the central executive and visuospatial storage in mental
arithmetic:A comparison across strategies
暗算における中枢実行系と視空間貯蔵の役割: 方略を越えた比較 2013
ロビー・ケイスではありませんが、神経心理学的な研究が増えてきています。ケイスが生きていたら、それらを参考にして、何を思いついたか、聞いてみたかったです。
A network model of a multi-item working memory task based on
competitive
reverberating neural activity
2011
競合的反響神経活動に基づく多項目ワーキングメモリー課題のネットワークモデル
Age-Related Differences in White Matter Tract Microstructure Are
Associated
With Cognitive Performence From Childhood to Adulthood
白質神経路微細構造の年齢に関連した差異は児童期から成人期までの認知的遂行能力と関連している 2013
次は、21世紀、教育関係者必見サイト(かもしれません)
Trends in Neuroscience and Education
ELSEVIER出版のサイト
神経科学と教育の潮流 日本語版が欲しいところです。
最先端の知見が常に正しいとは限りませんが、塾で仕事として教える身としては、参考にして工夫し続けたいです。