-- お知らせ2019 -- 学友舎高崎(学友舎 lab)
【 最近の中学校テスト問題と複数のデータベースに見る学力のとらえ方 】
2019年3月31日
中学校のテスト問題は、教科書が改訂されると変わります。前回2016年の改訂の際は、市内のおもな中学校の、主要5教科の平均点は60点台になりました。
ゆとり教育の時は80点から90点でした。それ以前は70点台がほとんどでした。
次回改訂は2021年に予定されています。
昨年4月から、教科書は継続版ですが、学習指導要領の先行実施が始まりました。次の教科書に盛り込まれる内容と指導方法が補充されます。
2018年度は、5教科すべての平均点が50点台以下という中学校もありました。
ある中学は、数学の平均点が40点台でした。公立中学数学テストの平均点が40点台とは、塾に20年かかわって初めてのことです。
教科書が改訂された際に散見した、平均点を下げるために、妙な日本語で書かれたテストは、見当たらなくなりました。
とはいえ、1年生と2年生にこんな問題が解けますかね、というような問題が含まれています。
入試問題としても正解率が30パーセントに達しないような問題が、1年生と2年生の定期テストに出題されます。
なぜこのような事態になっているのでしょうか?
都道府県教育委員会が行っている研修のレポートと、同じく授業改善のための学習指導案から、事情がうかがえます。いくつか調べてみました。
学校の先生方は大変なようです。群馬県も長期研修員制度を設けて、授業研究に励んでいます。学校関係者以外が閲覧できる研究レポートは、群馬県総合教育センターのホームページにあります。
群馬県の教育資料データベースにある学習指導案は、残念ながら一般には公開されていません。
他府県は公開しているところがあります。福岡県と埼玉県もその内です。
学習塾の業務として PDF ファイルに目を通してみました。
福岡県が公開している授業改善の Strategy は、平成20年から24年までの全国学力・学習状況調査と福岡県学力実態調査をもとにしています。
すこし過去のものですが、学習指導要領の改訂に対応しています。
そこにあげられた問題の正答率を、いくつか具体的にあげてみます。
社会 ( 平均正答率 9.6% / 期待正答率 50.0% )
数学 ( 福岡県平均正答率 9.8% / 全国正答率 12.5% )
社会 ( 正答率 3.4%)
正答率が高い問題は、授業改善の Strategy として取り上げる必要はないですから、正答率の低さが目立つだけかもしれません。
とはいえ、全生徒の1割くらいしか正答しない内容を、学習課題 ( 習得目標 )としていたことは明らかです。すくなくとも、学習指導要領改訂の目的でした。
平成23年度になると、具体的な指導の在り方として『小学校での学習内容の活用』という提言が出てきます。
以下のページは非公開になりました。
これは埼玉県が公開している平成28年の学習指導案にもあらわれます。中学1年数学、1次方程式の指導に関連した部分からの抜粋です。
・「比例式の性質」を説明するために必要な既習事項。
小学校の教科書を提示しながら丁寧に確認を行う。
同じく埼玉県の中学1年社会 ( 地理的分野 ) の指導案には、小学校新学習指導要領がとりあげられ、次のような説明があります。
『 小、中、高等学校の一貫性からみると、中学校社会科地理的分野を特色
づける学習でもあり、小学校での学習との関わりも考慮した指導計画の
作成が必要であると考える。』
大まかな流れは、当初は、全国学力テストとして示された学習内容の、学力クラスターの分析が中心でした。テスト問題を解くために必要な学力の内容を分析して、指導案を考察しました。
次第に小学校内容の学力との関連が問題にされ始めました。
中学校の定期試験で、平均点が教育史上はじめてかと思われるくらい下がった要因は、次のことでしょうか。
@ 目標とする『学力』に、初めて遭遇する問題としては、1割前後の生徒し
か正答しない内容が含まれている。
A 小学校の学習内容が身についていないと、理解があやふやになる ( テスト
で正解できない ) 内容が含まれる。
言いかえると、小学校から学んできたことを、全体として把握して考えら
れる学力、が目標とされている。
つまり、平均的な学力層の学力を確かなものにすることから、できる生徒の学力を伸ばすことに、学校教育システムが変わりました。
カナダやシンガポールなどいくつもの国は、一部のできる生徒のためのカリキュラムを区別し、それに合わせて学校のクラス編成と教員配置もしています。
その配慮をせずに、1割前後の生徒が正解する内容を学習目標とし、テストに出題しますから、平均点は下がります。
常識的に考えて、小学校ではあまり勉強せず、中学から勉強するというのが普通のパターンです。
小学校内容と中学校内容を関連させて考えられる思考力をつけるためには、補習 (さかのぼり復習 ) が必要です。
その時間的余裕は、現実の中学校にはおおかたありません。
高崎の中学校は、小学校と同じように数学の時間を学力別に分け始めました。
ゆくゆくはカナダやシンガポールなどと同様に、まろやかな複線型中等教育が再現すると予想されます。
では、どうしたらよいでしょうか?
学友舎ではすでに以前からこれに対処してきました。
学友舎の授業での対応は、『学習の進め方』と『 お知らせ 』と『 Q&A 』をご覧ください。
日々の授業に、さかのぼり復習を、説明としても練習としても、取り入れてきました。
また、『 テーマ別講座 』として、さかのぼり復習をすることもできます。
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それにしても、前代未聞の事態です。期待正答率50%とは、発達心理学の実験で、その年齢集団が年齢的にできると仮定する基準です。
そう予想して実験結果が9.6%のとき、普通の心理学者は自分の思索を現実に合わせます。
現実が9.6%の時、それを50%と偽りでなく予想し、約50億円をかけて実験を実施したら、学界では完全に権威を喪失します。
それは、多分、経済的波及効果を除けば、1割の生徒に何を教えるかを調べるための研究です。
2017年度・全国学力テスト外部委託料
ベネッセ 21億5千万円
電通 19億8千万円
零細企業としては、まことにうらやましい限りです。塾をしていると採点員のアルバイトに応募しても蹴られます。
大学入試関係もベネッセに1年度21億円で外部委託されました。
(2019年9月1日追記)